感想 ミッドサマー

この記事では遠慮なくネタバレします。
それでも構わない方のみ下に進んでください。
























ミッドサマー観てきたわよ!
その前に同じくアリ・アスター監督のヘレディタリーも観ておいた。
ヘレディタリー観た時の実況ツイートがあるので、ヘレディタリーの内容を覚えてる方はご覧頂いてもよいかもしれない↓
https://twitter.com/i/moments/1227169914617614338
ヘレディタリーは大雑把に言うと「最悪!!」って感じでしたね(「最悪だよ~」と紹介を受けたうえで視聴した)
同じ監督ということもあって、ミッドサマーとヘレディタリーで通じるところもいくつかありましたね。

で、ミッドサマーですけど、最悪!!って感じでしたね!(2行ぶり2回目)
不快感が強い!そしてその不快感はおそらく意図された通りの感情なのでしょう……。
映像作品としてすごく良く出来てるんだろうとは思うんだけど、人に勧めるかというと……勧めないわね!
でも最後のシーンは謎の爽快感がある。
カタルシス特化なのか?
これを嬉々として勧める日本語公式ツイッターは大概狂人↓
https://twitter.com/midsommarjp

あと、日本語公式サイトに「完全解析ページ」っていうのがあって、その内容も見た上での感想になります。
視聴済みで、自力での考察にこだわらない方は読んでみてね↓
https://www.phantom-film.com/midsommar/



さて感想ですけど~。
まず悪いところ……違うな、私がホラー映画全般に対して思うところ言うわね。
人間の感情がうざったい!!!
家族の不仲!恋人の不仲!悪徳!精神病!ヒステリー!みたいな……。
ホラーよりそっちのが怖いわ!

でもまあ確かにミッドサマーはホラーではない気がする。
怪異とかは出てこないのよね。
すごく簡単に言ってしまえば殺人集団に紛れ込んでしまった感じ……。
でも、その殺人集団につけ込まれてしまう理由は、主人公達が不仲とか将来の不安を抱えてるから……みたいな。
(ただ、これは同情なんですけど、せっかくの夏休みなのにド田舎出身の人の帰省について行っちゃって、クソ自然でしばらく生活するハメになるのは純粋にかわいそうw)
なんかもっと善良で瑕疵のない、精神的に安定した人が問題に立ち向かって欲しい。
人間の不安定な精神のほうじゃなくて、立ち向かうべき問題のほうにフォーカスして欲しいっていうか……。

ミッドサマーなんかもう、主人公がメンヘラ女だから、判断を全部悪いほうに持ってく感がヤバいわね。
一種の自業自得?みたいなものを映画全体で演出してる気はする。
殺される人物は何かしら欲をかいたり、失礼を働いたりしてから殺されてるし……(ただ映画の尺の都合か、その描写の深さにキャラ差はあるように思う)。
じゃあ、完全に善良な人物だったらどうなるのか?って思ってしまうわね。
あるいは善良な人間なんていないみたいなメッセージもあるのか?
主人公側の登場人物がだいたい態度悪いので、普通に見苦しいと思う。

中では善人っぽかったジョシュ(黒人男性)は、勉強熱心でいい人そうなのに、何かとかわいそうだった。
ジョシュがホルガ(共同体)の聖書を盗み撮りに行ったのは、なんか唐突だな……無理矢理に死因を作った感じするな……と思った。
あとジョシュ死亡シーンの殺人犯については、上記の完全解析ページ見ないと演出の意味が分からなかった……(完全解析ページの「18.『悪魔のいけにえ』」を参照)。
善人っぽいと言えば、コニー(イングマールが連れてきたイギリス人の女性のほう)も目立った悪行なしに殺された気がする?
以前イングマールがアピールしてたのになびかなかったからとかかな……。

ヘレディタリーも含めて、依存性の薬物をキメるような調子乗った学生が痛めつけられるみたいな共通点を感じて、これもしかして監督の私怨じゃ……みたいに思うところも。
それと、主人公は序盤に家族が死んだ時と終盤に恋人の性行為を目撃した時とで、2回激しく嗚咽するんだけど、彼女は1回目の時に無言で抱きかかえてなだめようとする恋人の接し方ではなく、2回目の、ただただ周りを囲んで嗚咽をオウム返しするホルガ(共同体)の女性達の接し方を選ぶわけよね。
ホルガは男女とも感情を共有する共同体っぽい描写がされているけど、最終的に主人公がそのあり方を選択するところから、なんか「女が求めてるのは結局は共感だけ!」みたいなメッセージを感じなくもない……。
これはまあ深読みだけど、主人公を男にして成り立つ話ではないのよね。

ミッドサマーのいいところは全体的な品質の高さと、共同体の設定と、最後の儀式の謎の爽快感かしらね。
これ娯楽映画か?っていうと個人的には怪しい。
特に中盤は「これまだ1時間あるのか……」みたいな気持ちになる。
(ただそれは他の映画でそうなりがち……私は長い映像が苦手……。)
でも例えば、学校で見せられる戦争の記録映像とか、あるいは免許の更新時に見せられる事故ビデオとかそういう、あえて凄惨な内容にすることで意識の向上を目的としている映像だと考えたら、そこそこしっくり来る気がするわね。
(私はバーチャル存在なので学校とか免許の更新とかはあくまであなた方の文化に合わせて聞きかじった情報を挙げているだけだが……)
「怪しい共同体には気をつけよう!」みたいな。
そう捉えたとしても、自然派の共同体とかスウェーデンに対する風評被害がすごくない!?とは思う!

共同体の設定がいいというのは、この映画を観ていく上での楽しみの一つだったわね。
少しずつこの不気味な共同体の内実が見えてくるのは良かったと思う。
共同体の不気味さの一方で、自然に囲まれた生活空間の視覚的な心地よさには惹かれるわよね。
そして何より画面が明るい!
ホラーに限らず、ひたすら画面の暗さだけで怖さとかかっこよさを演出しようとするのはもうコリゴリ。
明るい中で不気味さ、不快さを演出しきったのは素晴らしいと思う。

共同体の設定にリアリティを感じるかというとそれは別で、ところどころ嘘っぽいと感じるところもあった。
これはまあ単に私の無知が原因だったり、あるいは理解力や想像力が足りないとか、もしくは監督のインタビューとかそういうの読めば語られてたりするかもしれない(作品の外で説明されなきゃ分からない設定は意味ないと思うけど)。
まず共同体の存在理由が分からないわね。
例えばカルト宗教だったら教祖が稼いだり、信者を食い物にするためにやってると思うんだけど、そうではないっぽい。
強いて言えば、やはり主人公が最終的に共同体を選んだ(ってことでいいのよね?)っていうのもあるし、感情を共有する共同体の在り方、つまり共同体の理念に対する賛同と所属することの気持ちよさだけで成り立ってるのかな。
こんな共同体が、少なくとも100年くらいは?続いてるらしきところも怪しいわね。
この小規模な共同体で、毎年9人も人を殺してたら普通に回らない気がする……あるいは、9人殺すのは序盤に言ってたように90年に1回の儀式なのかな?
そうだとしても、72歳で自殺する文化なのにどうやったら90年に1回の祭を口伝できるのか……なんか設定を聞き漏らしたかな……。

18歳から36歳までは外部に出るっていうのも(これ実際そういう、しばらく海外に行くのが教義になってる宗教あったわよね?大丈夫なのか?)設定は面白いんだけど、こんな閉鎖空間で育って18歳でいきなり外に出られるのか?っていうのと、その18年で外部の文化に感化されて戻ってこなくならないか?っていうのは思うところね。
英語の話者が内部にそれなりにいたり、クマの解剖を子供に見せて医学教育を施してる描写はあったから、もしかすると結構な教育水準があって、案外優秀な若者として海外の大学に行ける設定とかなのかな。
映画の舞台は思いっきり大自然の中だったけど、普段は近代的な生活してたりとか?それはちょっと魅力に欠けるけど……。

あと、過激演出すぎて嘘っぽさを感じてしまったのは、「血のワシ」っていう処刑方法のシーンね。
これは前掲した日本公式サイトの完全解析ページに記述があって(完全解析ページの「9.血のワシ」を参照)、サイモン(イギリス人の男性のほう)の遺体が出てくるシーンで、遺体に見えるけど実は生きたまま背中を開かれて内臓を取り出されてるっていう残酷描写なんだけど……。
サイモンってそこまで酷い目に遭うようなことしたか?(共同体に共感せず罵詈雑言を浴びせたが、それは連れてきたイングマールが悪いと思う……)っていう感覚もあり、ここだけ妙にスプラッタすぎて浮いてるように感じた。
派手な演出をやりたいからやっただけみたいな……「血のワシ」自体疑問で、実際にこんなことできるのか?できたとして、出血多量とかですぐ死ぬんじゃないかと思うし、こうもおとなしくしてられないんじゃない?って印象(拷問や処刑のことは分からんけども……)。

話を麻薬の効果に頼り切ってるなと思うところもあるわね。
共同体にとって都合のいい非科学的な効果は全部麻薬!って感じ。
とはいえ、個人的には、これはまあいいかな、仕方ないかなと感じている。
麻薬のことわからんし……何かしらの嘘は物語に必要だし……。

共同体の存在がウソっぽいというのは、(上記の血のワシみたいな「整合性がイマイチに感じる」ところは別として、)リアルすぎて実在できちゃっても困るし、話や映像を優先していくらでも許されるところとは思う(散々挙げた後で言うことでもないかもしれないが)。
もし私に見えないところで完璧な設定が作られていたとしても、映画の尺の都合もあって全部は説明できないだろうしね。

もう一つ、ウソすぎてちょっと笑ってしまったのは、クリスチャン(主人公ダニの恋人)の飲み物だけ色が明らかに赤いシーンね。
恋の魔術として食べ物に毛を混ぜ、飲み物には血を混ぜたんだと思うけど、さすがに飲み物の色はバレるでしょ!wって、さすがにさすがに……。
マヤちゃん(クリスチャンを狙う女性)周りだと、いうてそんな一発妊娠を確信できるか?wっていうのもあるわね。
似たところでは、意図的に障害児を産むために近親交配するって言ってたけど、そんな楽じゃないだろ!と思う。

最後の儀式の爽快感!これはヘレディタリーに通じるわね。
ヘレディタリーも人間の感情がキツくて気分悪かったんだけど、最後の儀式でなんだか気分がアガってしまった。
ミッドサマーでもここに来て話が終結し、ゴタゴタ言ってた人間どもはもはや死人に口なし、主人公も完全に飲み込まれてしまっていて今更何も言わないし、楽しく異常光景を眺めるだけって感じで良かったと思う。
言うて共同体の人と恋人とを天秤にかけられて、恋人の方を殺す選択をするメリットあるか……?と思ったけど、まあ、主人公の女は最初から割と狂人だったしね……今更彼女に正常な判断は求めないよね……女王って崇められて気分よくなっちゃってるし……。

あと個人的に良かったシーンは、主人公が女王になって浮かれ散らかしてる食卓シーンで、マヤちゃんが立ち上がってクリスチャンを表情で煽りながら去って行くシーン。
マヤちゃんの表情……ヒュウ!セクシー!って思った。
豚なので……あと豚なので、問題のマヤちゃん性行為シーンでは、背後の中高年女性達の中に若い人とかおらんかな?と思って必死で目を凝らしました。
作者の意図を汲み取りたいしさ……そこはさ……。
着床を確信したマヤちゃんがそれ以降は口紅つきで登場するのも良かったわね。
色気づくじゃ~ん。

ミッドサマーについてはそんなところかな!
総じて主人公サイドの人間のギスギスがダルかった!
序盤の、スウェーデンに行く前のやりとりとかね……。
ホルガの人達の不気味な文化というのは楽しめたと思う(血のワシに納得がいかない以外は……)。
楽しい映画だったとは言わないし、人には勧めないけど、観たことは教養になった気がする。
かなり席が埋まってた劇場で観たんだけど、終演後の重苦しい空気、気まずかったわね……。
重苦しい空気というのは私が勝手に思い込んでただけで、もしかするとみんな大満足だったかもしれないけど……。
そんな映画でした!

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