映画感想 『ウィッシュ』(原題:Wish)

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『ウィッシュ』公式サイト

上映時間95分。
『ワンス・アポン・ア・スタジオ -100年の思い出-』(原題:Once Upon a Studio)が同時上映。
日本では2023年12月15日公開のディズニーアニメ映画。

 

※以降はネタバレを含むため注意。また、内容を揶揄する記述もあるため注意。※

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

評価・ネタバレあり感想

総合評価:★★★★
面白さ :☆☆☆
すごみ :☆☆☆☆☆
手軽さ :☆☆☆☆
当ブログにおける作品の評価基準についてはこちら(別記事)

 

 聞いたところによると、ディズニー100周年を記念する作品ということで、過去のディズニー映画をオマージュしたシーンが大量にあるとのこと。恥ずかしながらほとんど分かりませんでした。ディズニー映画をまったく観ていないわけではないですが、映像としてはぜんぜん記憶してないということですね……。以下の文章は、その程度のニワカの感想です。ご了承ください。

 

同時上映の「ワンス・アポン・ア・スタジオ」について

 人が帰ったあとのディズニーアニメスタジオにおいて、ミッキー・ミニーを始めとするディズニー映画キャラクターが動き出し、100周年を記念して集合写真を撮るというお話。そのスタジオ、ちゃんと夕暮れ頃には人が全員いなくなるんですかね……。過去作も資産としてしっかり管理してて、動かそうと思えば動かせるんだぞ!!というすごみを感じる。映像だけでなく、一人一人のセリフは短いにせよ、これだけの人数を音声収録しているのもすごい気がする。ウィッシュ本編は英語音声・日本語字幕の回を観たのですが、これは日本語音声・日本語字幕だった。外国語のぶんも収録してるんだからなおすごいね……。

 

感想(作品のテーマについて考えない)

 お話はシンプルな勧善懲悪で、主人公が悪役を倒してハッピーエンド。何が善、何が悪として描かれているかの話はここではさておく。ミュージカルシーンが多くて長いこともあり、複雑な話や寄り道はかなり少なかったように思う。国全体が幸せそうな割に、主人公がいきなり国家転覆に鞍替えするのがちょっと怖かった(あるいは面白かった)気がする。この辺はあとでたっぷり揶揄するとして……。

 キャラクターは、友達チームの恥ずかしがり屋の女性(バジーノ)がかわいかったですね。サークルは彼女によって破壊されると思う。王様もハンサムなのでオタクみんな好きだろうと思う。スターくんは任天堂を感じる。子ヤギのバレンティノくんについては、イカつい眉毛と変な声でちょっとギャグに走り過ぎかな……。主人公は髪型がいいね。どうぶつ達もいろいろとかわいいんだけど、発話能力を獲得した途端に食物連鎖を放棄するのは、人間メインの物語ではちょっとリアリティラインが怪しい気もした。あるいは食物連鎖関係なく、そもそもクマはあんまりわざわざ哺乳類を取って食べないという話かな?見た目は間違いなくかわいい。うさぎさんとか。

 ディズニー最新作ということで映像については当然の最高品質。ポリゴンだけど2Dっぽさを感じる処理になってた気がする?序盤は特にミュージカルシーンが連発するので良かったですね。楽曲も、同じフレーズを繰り返すものが多くてキャッチーな造りになってると思いましたが、一方で、アナ雪(特に1のLet It Go)のようなインパクトはなかったようにも思う。私個人の好みの話が入りますが、ソロ曲が欲しい気がする。結局はヴィランの扱いになる王様の曲が多かった気もする。物語のオチとしては王様を完全に悪者扱いするわけだけど、視聴者に王様を好きになってもらう分には構わないのだろうか。不思議なつくりだ。

 作品が持ってるテーマ性みたいなものを「意識的に考えないようにすれば」、物語の構造はやや平凡として、他はハイレベルにまとまった良作と言えるのではないでしょうか。ディズニーの過去作をよく知ってる人であれば、オマージュ要素によって更に評価が高まるんでしょうかね。

 最後に一点ツッコみたいのは、友達チームがロープを引っ張って城の屋根を跳ね上げるシーン。ロープを持って手すりからダイブするところまではいいのですが、結局下の床に着地してからあらためて引っ張るのであれば、引く力は変わってないのでは……。

 

感想(作品のテーマについて考えてしまう)

 ※ここから揶揄全開※

 「目覚めた人」の映画だこれwwwwwwと思って、上映中ニヤニヤしてしまった。実はこの政権はこんなに悪いことをしているんだよ!YouTubeで言ってた!ほら見て!ね!?

 主人公アーシャが「私のせいだ……」と落胆するシーンがありますが、序盤はたしかに国民みんな幸せに暮らしている様子を描写してしまっていますよね。なので、事実としてアーシャの行動のせいで王も国民も幸せな生活を失っている。テーマとして反権力の要素を多かれ少なかれ含んでいると思いますが、そのテーマにおいてこの展開はアリなんでしょうか。「あなたが行動を起こした結果、不幸になる人がいるかもしれません。でもそれは一時的なものです!!最後はハッピーエンドですから構わないのです!!さあ行動を!!」というところまで含めてテーマなのであれば、それはまあ……すごいね。序盤でもうちょっと、たとえば現状で不幸なのに存在を揉み消されてる人がいるとか、そういう王様の統治の怪しさを描写してくれていれば、もっと納得感があった気がする。

 物語の舞台は地中海であるとなぜかわざわざ明言されるわけなんですが、主人公が「目覚める」過程を考えると、カリブ海のほうがそれっぽいんじゃないのお?wwwwwなどとまた揶揄が沸いてくる。独裁者に落胆してるところに、空から(海の向こうから)「言葉の通じない陽気な奴(何でもしてくれる)」がやってきて、クーデターをそそのかされるわけです。独裁者側もその対応に追われて国は傾いてゆき、無事に国が倒れると、「奴」は海の向こうへ帰っていくのでした。王様は確かに独裁者とはいえ、移民が集まって王様との合意の元で幸せに暮らしてたんだよね?この島……。それまで王様を敬愛していた主人公が、いちどお願いを断られた途端にアンチに転ずるところも急で怖い。「奴」は人の心(と政権)の隙を見逃さないんだね……。

 ↑なお「地中海」については、作中で「mediterranean」と言われていて、これは確かに現実の地中海を表す単語でもある一方で、たんに「このウィッシュの世界において、とある大陸と大陸の間にある海」という意味かもしれない気はしています。ただ「とある島のお話」くらいの意味みたいな。そうであってほしい気持ちがある。ファンタジーであれ。

 ここまでの話は、物語と同じように「政権と国民」という構図でテーマを捉えています。「夢を王様に託す」っていうのは投票に例えているのかな~、公約を信じて投票しても叶えられないことは確かに多いよな~、みたいな……。で、そうするとまあ、こりゃあモロに反体制の啓蒙ムービーだぁ~wwwという気持ちにもなる(しかも「投票に行こう」とかじゃなくてクーデター奨励!?www)。一方で、もしかしたら国の話じゃなくて、もうちょっと身近な規模、すなわち「経営者と社員」みたいな構図でテーマを捉え直してみてもいいかもしれない。そうすると……あっ、D社!?このたび100周年を迎えたD社!?D社のワンマン経営者として知られたW・D氏!?いわば夢を人質に才能ある社員を集め、その実そうとうなブラック労働を強いていたとも言われるW・D氏!?W・D氏との実体験に基づくクリエーター目線の自己反省的100周年記念ムービー!?もしそうだとするとさすがに面白すぎる。同時上映の「ワンス・アポン・ア・スタジオ」でD氏の泣ける演出やってるのに……。みんな経営者に騙されるのはやめよう。権利を取り戻そう。組合だ!

 そんなようなことを上映中にぐるぐる考えてしまった結果、「もう考えるのはよそう、映像作品を楽しもう。きっと制作陣は民主主義への不満も経営陣への不満も持っていない、こんな美しい映像に政治的メッセージを感じ取っていいわけがない、禁書だ禁書、禁じられた力に取り憑かれた人間を救う方法はない(禁書にそう書いてある)」という脳内リミッターを働かせ、ブログ記事をいちおう段落分けしたうえで、結局このように書き散らしたわけなのでした。王様の耳はロバの耳ーーーーーッッッッ

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