映画感想 『ソウルフル・ワールド』(字幕版)

リンク

ソウルフル・ワールド(Disney+)

夢追いウサギ(Disney+)

『夢追いウサギ』は同時上映タイトルとのこと。短編。

 

作品の経緯について

 PIXAR社のCGアニメ映画、2020年の最新作。

 Wikipedia記事からの丸写しですが、元々は2020年6月公開予定だったものの、新型コロナウイルス流行の影響を受けて延期し、更に劇場での公開が断念された結果、2020年12月25日にディズニー傘下の動画配信サービスDisney+で公開されることになったそうです。ちなみに、サービスの月額料金を払っていれば見放題のタイトルになります(追加料金は不要)。

 Disney+は月額700円(税抜)なので、その料金だけでインターネット越しに新作映画を何度も観られるのはすごいですね。初月無料なので、今まで契約したことがなければなんならタダで観られます。

 個人的には映画館に行くのってそれなりに大変なので、インターネット配信で観られるのはすごく楽でよかったですね。映画館で上映されなかったことはとても惜しまれることなのかもしれませんが、インターネット公開に踏み切った判断もすごいと思います!

 

感想(ここからネタバレに注意)

■総評

 総じて観やすく、面白い映画でした!私はだいぶPIXAR社のアニメCG映画が好きです。音楽もいい。SF……これはSF(サイエンスフィクション)でいいのだろうか?サイエンスではないような……とはいえ代わる単語が思いつかないのでひとまずSFと呼称しますが、生身の世界のアナログ感と、魂の世界のデジタル感がバランスよく、SF要素がいい感じに効いていましたね。

 

■足下注意

 主人公が浮かれて不注意になり、フタの開いたマンホールに落ちて死ぬところから物語が動き始めるわけですが、それも含めて「足下をしっかり見て生きよう」といった感じの示唆を受けましたね。人間、柔らかいんだから気をつけて生きないとだめだよ。

 物理的な足下に限らず、概念的にも、「目標」に囚われすぎず瞬間を味わって生きること、もし目標に到達できなくても今のあり方を楽しむこと……みたいなメッセージ性があったと思います。主人公が忘れていた感覚ですね。

 とはいえ主人公はなんだかんだ才能を持っており、目標に到達できるわけなのですが、それに際して思ったほどの高揚感を得られずに困惑するシーンが印象深いです。”海を探しているんです”、”海か 今いる所がそうだよ”、”これ?これは水です 僕は海が欲しいんだ”という寓話、「魚の話」も作中で語られますね。私自身も思い当たるところがいくらかあります。目標……すなわち「上」ばかり見上げるのではなく、地に足をつけてやっていきましょう、というのが一つのテーマなのかなと思いました。

 

■音楽がすごい

 主人公がジャズミュージシャンということで、アコースティック(生音)な音楽がところどころで挿入されてかっこいいです。それに対して、魂の世界ではデジタルな音が使われており、その対比も楽しいところですね。

 特に、死を認めなかった主人公があの世への待機列を抜け出し、魂の世界に最初に迷い込む時のシーンは、かなり音響的に凝ってそうな感じでした。感じでしたというのは、私はイヤホンで視聴したわけなので、実際に意図された音響がどうなるのかは分からないからです。当然、映画館で上映されることを想定して音声は作成されているでしょうから、その点は(現時点では)インターネット配信限定になってしまっていることは無念も大きいんでしょうね。

 

■SF?魂の世界

 サイエンスというよりはどちらかというとスピリチュアル方面ですが、まあ量子がどうこう、ポータルがどうこうみたいな言質もあるので、ひとまずSF枠ということにします。

 この作品の特徴の一つとして「魂の世界」とでもいうべき異世界(作品内での呼ばれ方は「生まれる前の世界」原語”The Great Before”、「死後の世界」”The Great Beyond”の対)が登場するわけですが、これが魅力的であり、かつ、どこか恐ろしいところですね。恐ろしいというのは、作品的に恐怖を感じる演出があるというわけではなくて、社会的に、スピリチュアルネタはちょっと宗教・思想臭いので言及するにあたって困るという意味です。

 この世界では生まれる前の魂に研修が行われ、性格がいくつか付与され、そして何か一つの「きらめき」(原語”spark”)を付与されたうえで地球に送られて生を得るという仕組みのようです。スピリチュアルですね~。きらめきというのは、その魂にとっての特技なのか、あるいは興味対象なのか。少なくとも、必ずしもそれが人生の目標(天職)となるわけではない、というのが作品で訴えているところでしたね。そんできらめきの獲得にあたっては、故人(偉人限定?)がメンターとして指導にあたる仕組みだそうな。

 この……まあ……「人間には魂がある」「生まれる前から性格や特性を持って生まれてくる」みたいなところは……その、ちょっと……”思想”ですが……作品のね!大きなテーマを伝えるための舞台設定ですよね!娯楽娯楽!ハハッ

 なんだかんだ言いつつも私は、主人公の現実世界よりは、このSFめいた魂の世界のほうに興味を惹かれましたね。世界観の設定を知ることが好きなので……。言ってみれば中盤の、主人公が猫になって現実世界で苦戦するパートは、(作中でおそらく最も大事なパートではあるものの、)起こる問題に対して後手に回り続ける部分なので、ちょっと焦燥する部分もありました。どうやって主人公は元の体に戻るんだろう?というミステリー的な部分にも楽しさがあった気がしますね。それを助けてくれるスピリチュアル部隊は若干マジでヤバそうな人達でしたが……。

 

■生まれる前の魂がかわいい

 これは萌え部分ですね。生まれる前の魂たちのCG・言動がかわいいです。私はあんまり現実の人間の赤子・幼児などには愛嬌を感じることがないのですが、CGでここまでデフォルメされているとかわいかったです。Quiet coyote~

 ところで、もう一人の主人公である「22番」はどれだけの年月を魂の世界で過ごしたのでしょうか?作中でメンターと最新の組にされている魂は「魂番号 1082億1012万1415番」とか呼ばれているんですよね。相当な数の偉人メンターを経由していることからしても、もしかすると22番は地球において純粋に22個目の魂だったりするのでしょうか。普通の魂は生まれる前の世界のことを忘れるそうですが(「誕生のトラウマを忘れるのは宇宙の恵み」)、全ての情報を保持したまま地上に22番が顕現したことの影響は看過できないのでは……(SFの見過ぎ)。とはいえ、実は22番が登場する前に「37番」と呼ばれている一般魂もいるので、番号はユニークではなかったりするのかもしれません。それももしかすると、例えば1082億37番を略して37番と呼んだりしてるのかもしれませんが……。

 

おわりに

 楽しくて音楽のいい最新映画を、インターネット配信で簡単に観られてよかったです!1回目を観るにあたっても、一時停止なんかも利用しながら思い立ってすぐに観られたし、見放題なのでこの記事を書くにあたって内容を再確認することもできました。

 この作品の公開形式については社会情勢に強いられた部分が大きいでしょうし、望まれた形での公開ではないのでしょうけども、映画を含めて、映像作品のあり方は今後も変遷していくのかもしれませんね。私としては、視覚にせよ聴覚にせよあまり感覚の解像度が高いほうではないので、自前の再生デバイスでインターネット配信のものを観るだけで満足できてしまいがちではあります。

 映画の内容ではなくてその経緯について話す部分も多くなってしまいましたが、最新映画を観るということは、その公開時の社会情勢なんかを踏まえて考えるのもアリなんじゃないかな~と思いました。などと自己弁護して終わろうと思います。楽しい映画でしたよ!

タイトルとURLをコピーしました