ゲーム感想 『Outer Wilds』

概要

『Outer Wilds』
PC、XBOX One、PS4用ゲーム

PC版(Epic Game Store)発売日2019年5月29日 2,580円
https://www.epicgames.com/store/ja/product/outerwilds/

PC版(Steam)発売日2020年6月18日 2,570円https://store.steampowered.com/app/753640/Outer_Wilds/

 

記事投稿日現在(2021/01/06)、Epic Game Storeで40%オフのセール中(1,548円)。
このセールは2020/01/08 01:00まで。

 

関連リンク(未プレイの方は閲覧注意)

 日本語wikipedia記事

 公式wiki(英語)

紹介

 紹介動画をYouTubeに投稿しました!16分15秒。ネタバレは控えめにして、「ゲームプレイはどういう雰囲気なのか?」を伝えようとしている動画です。ゲーム画面の参考にでも。

 とある太陽系で、新米宇宙飛行士になって宇宙を探検するゲームです。高度な科学技術を持ちながら滅びた前文明の謎!そして主人公は不思議な出来事に巻き込まれてしまう……。

 世界観に対する好奇心をおおいにかきたてられ、そして自力で星々を探検することで謎を解明していくのがとてつもなく楽しいゲームです!宇宙関係のSFが好きな方にぜひおすすめですね。世にSFは数あれど、「ゲームとして自分で謎を解いていくことができるSF」ということで、完成度の高さに感動してしまうようなゲームでした。

 ちなみにクリアまでの私のプレイ時間は20時間でした。長すぎず短すぎずという印象のボリューム感で、これもまた好印象!

 自分で謎を見つけ、そして解明していくゲーム体験がとにかく良いので、できるだけネタバレしたくないゲームです。ネタバレせずに魅力を伝えるのもなかなか難しいのですが、ぜひ事前情報をあまり取り入れずに、プレイして味わって欲しいですね。

 

感想(ここからネタバレ注意)

 ここから先はネタバレ満載でクリア後の感想を書いていくので、未プレイの方やネタバレを見たくない方は読まないようにしてくださいね!

 

 

 

 

 

 

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主人公の能力は何も変化しないのに、行ける場所・やれることが増えていく!

 このゲーム構造、ゲームバランスが本当にすばらしかったと思います!実績「ビギナーズラック」(1回目のプレイでゲームクリア)が達成可能なように、実はすべての場所へのアクセスが初回プレイ時から開放されているんですよね。でもプレイヤーに知識と経験が無いからそれはできない。一つずつ、まずは月(アトルロック)に着陸するなどして、太陽系全体に対する知識を深めていく……。

 よくあるゲームのつくりとしては、操作キャラクターが最初は通常のジャンプしかできず、目に見えている分岐路まで高さが届かない。あるマップの最後で2段ジャンプのアイテムを入手すると次のマップへ行けるようになり、更に次のマップではダッシュができるようになり……という風に、キャラクターの能力を追加することで行動圏を広げていくものがあると思います。私は結構これが好きなので、Outer Wildsのプレイ最序盤では「キャラクターの成長要素がないからハマれるか分からないかも?」みたいなこともつぶやきました。しかしキャラクターが成長しなくても、私の知識が成長していく!知識によって、行動範囲が広がっていく!それがめちゃめちゃ楽しい!とても新鮮な体験でしたし、ゲームの楽しさにキャラクターの成長要素は必須ではないんだな~と思い知らされました。

 まずこの構造がすばらしいのですが、そのうえで、行ける場所・行くための知識が増えていくバランスもいい!一つの箇所を探検すると、次の場所を探検するための手がかりが得られるみたいな。それでいて、どこから着手するかはプレイヤーの自由。ある程度の指針(先輩宇宙飛行士の存在、操作難易度的に行きやすい場所で得られる情報など)はあるものの、最初からシステム的に侵入不可能な場所はなく、どこからでも調査できるようになっている。だけど問題なくゲーム性が保たれている。情報の伝え方の順番とか量とかが、すごくよくできているように思います。

 実際にやることはマップの往復ながら、「ここに行ってこい」「ものを取ってこい」「あの人に届けてこい」などといった、いわゆる「おつかいクエスト」が無く、すべて自主性に任せられているおかげで作業感や苦行感がないのもいいところですね。ゲームのつくりが、「必要十分」という感じがします。情報が各地にちりばめてあり、導線も用意してある。だからおつかいクエストはないという感じ。フレーバーテキストの量も適切で、基本的には世界を知るための情報に付随して、人物の個性が伺い知れる程度という感じ。

 なおご存知の通り成長要素はゼロではなく、「次のループまで瞑想」の習得は存在しますね。これは確かに無いと不便であり、かといって最初からできるのも不自然であり……というところ。プレイヤーによって習得時期が変わってきてしまう、もし気付かなかったら結構時間をロスするかも……。加えて、最序盤だと焚き火でうとうとできないな~というのを動画の収録をしていて気付きました。あれはどこで習得したんだろう……。

 

世界観、グラフィックが完璧

 システムが良かろうとも、ゲーム内の世界に魅力がなければ没入することはできないわけなのですが、その点でもOuter Wildsは完璧でした。宇宙の仕組み・法則、Nomaiの歴史や業績、それらとHearthianの関わり合い、すべてが濃密で興味深かったです。Nomaiが宇宙の眼を目指してこの太陽系にやってきて、それぞれの不時着先の惑星を理解して生存し、惑星間移動技術を復活させてからは量子の月の研究や各種プロジェクトを進行させ、Hearthianの先祖も発見、最後は宇宙的な天災とでもいうべき悲運な事故によって滅びていくという軌跡が、どこを取っても面白い。最初はバラバラなそれらの情報が少しずつ繋がって最後は一連の歴史になる、それらを知ると同時に自分自身もこの太陽系への理解が深まっていくという体験は何にも代えがたいものがありますね。そのためにNomaiの記録を調べ回ったり、先輩宇宙飛行士から意見を聞くという手段もまた、世界観の中に調和していて自然です。あくまで宇宙の事象への理解がメインになっていて、人物の物語には深入りしないのも好印象ですね。

 グラフィックもちょうどいいと感じました。十分に高品質でありつつ、過度に美麗ではないと感じます。今時はもっとハデなグラフィックのゲームももちろんありますが、Outer Wildsはこれでちょうどいいように思います。これがいちおうインディーズゲームの枠で開発・販売されたというのはすごいですね……。

 宇宙というハイテクを感じさせるテーマでありながら、Hearthianの文化は木を重用している、宇宙船にすら木材が使われているし、各地で酸素のために木が植えられており、飛行士はみんな焚き火をしてアコースティック楽器を演奏している……というのも魅力的です。個人的な見解ですが、どうも近未来ゲームというのは色調が白黒もしくはセピアに偏りがちで、海の青、森の緑、太陽の赤……というような自然な色合いというのはなかなか見られないような気がしています。私は探索するならそういう色合いの3D世界のほうが好みなので、そういう点でもOuter Wildsに合っていましたね。タイトル画面も、宇宙ゲームながら星空の下には森と焚き火、そしてBGMはアコースティックな音楽……という空気感がかなり好きで、名作を感じさせる名タイトル画面ではないかと思っています。

 

量子ネタが最高!

 量子力学ネタ……というよりは「SFあるある的な量子ネタ」だとは思いますが、量子関係の探検にとにかく好奇心をくすぐられました!量子のかけら、量子試練の塔、量子知識の塔……そして量子の月!

 実は、村の博物館の中庭に小さな量子のかけらが置いてあることにしばらく気付かず、最初に量子のかけらを視認したのは脆い空洞の地表、量子知識の塔付近のものでした。量子知識の塔の存在は序盤に認識したものの、中を確認する方法に気付けたのはかなり後のほうだったなぁ……。

 要するに「観測者がいて初めて存在が確定する」という感じのネタですが、それがプレイアブルなゲームに落とし込まれているのがすばらしいですね。知見としてうっすら知っている程度のSF的な量子ネタでしたが、それにゲーム内で実際に立ち向かえるとなると興奮度が違う!そして偵察機があるおかげで、プレイヤーは二つの観測視点を使っていろんな向き合い方ができる。パズルゲームの様相が出てきますね。そのチュートリアルが量子試練の塔で、その存在も不自然にならない程度にちゃんと世界観に溶け込んでいる。

 序盤からずっと気になっているのに上陸方法が分からない量子の月……そこに行くために巡礼が必要とされている量子知識の塔はどうやって登ればいいか分からないし、同じく必要とされている量子試練の塔はどこにあるかも分からない!そんな状態から、巨人の大海でふと巨大すぎる竜巻が気になって量子試練の塔を発見し、苦戦しつつも踏破(踏破しても、得られるのは知識だけ……というのはあらためてすごい)。のちには「今の私の進行度で量子知識の塔に入れないわけがない」という自信を感じて、まず徒歩でダメなら宇宙船で直接行ってやれ!と挑戦するもこれはダメ。しかしここは脆い空洞、もしや……待っていれば量子の塔も落下して宇宙に放り出されるのかな!?……ビンゴ!さて、もはや知識として足りていないものはないはず、いざ量子の月へ挑戦。果たしてどうやって着陸すれば……もしや宇宙空間でも偵察機が!?偵察機でどうやって撮影したらいいんだろう……うおおお突入!!できた(地表に激突しつつ)!!Outer Wilds完!!(なお北極に辿りつく方法が分かるまでまたしばらくかかった)(そして量子の月に来ただけではクリアにならない)

 たしか燃え盛る双子星にある量子のかけら(あるNomaiが石の上に乗ってワープしてしまったやつ)の場所に気付いたのは量子の月に到達した後だったような気がします。場所がわかりにくくて……。各地の量子のかけらにもそれぞれエピソードがあり、量子のかけら・量子の月に対するNomaiの考察や見解もいちいち好奇心をかきたてる内容になっていますよね。

 そうして辿り着いた量子の月の奥地には、とんでもない情報があり、しかしやはり情報のみ。まだまだ冒険は続く……がしかし、結局、オチは量子なのだ!宇宙の眼もまた量子的な存在なのだ!量子万歳!

 

とはいえ気になったところ

 本当に完成度の高いゲームだと感じましたが、とはいえ、一通り遊んだうえで、まあちょっと印象よくなかったな~苦行だったかもな~という箇所はありました。

 私の場合、主には灰の双子星関係ですね。特に世界をおおむね理解したあとは、灰の双子星にワープ目的で行く機会が大幅に増えるにも関わらず、まずそもそも第一惑星であるという立地からして、太陽に突っ込んでしまって移動に失敗しやすい!ワープは単体で目的になるというよりは、ワープしてから他のことをやったり(先進的ワープコア系)、何かしてからワープに向かったりするので(ブラックホールの鍛冶場)、ミスした時のロスも大きいです。そのうえ、ワープは天体の中心に直列でないといけないので、灰の双子星の自転を待つ必要がある。なおかつ灰の双子星は最初は灰に覆われているので、ループ開始直後には利用できず、焚き火でしばらくうとうとする必要がある。クリア直前、あるいはクリア後の実績・イベント回収はここでだいぶ待ち時間が発生しましたね……。さらにさらに、終盤で特に重要になってくる灰の双子星のコアへのワープ塔は天井が壊れているため、ワープ可能なタイミングでは流れていく灰に吸い込まれてしまいます。おそらくこれは天井がある近くの場所で待機しておいて、ブースターを逆噴射してワープ装置に乗ることで対応するのかと思いますが、それに気付くまでこのワープ装置は利用不能なのかと思い込んでしまい、灰の双子星のコアへの移動方法を探すのにかなり迷ってしまいました。

 もう一つは航行記録のうち、Chertのキャンプですね。ゲームクリア時、「探索できる場所が残っています」の表示もなくなり、すべての航行記録をコンプリートしたつもりでいたのですが、該当の実績が解除されませんでした。悔しく思いながら実績解除方法を調べてみると、時間帯によってChertの会話が変わるので、そこで埋まる記録を見落としやすいとの記載あり。私の場合はまさにそれを回収したら実績解除になりました。そこまで気にしているわけではないですが、自力で全て回収した!という気持ちになりたかった思いはありますね~。Chertのキャンプに「探索できる場所が残っています」を表示してくれれば……。

 よく分からずに時間がかかってしまったのは、脆い空洞および燃え盛る双子星の重力砲。てっきり回収したシャトルを内部から発射させてどこか(元々シャトルがあった量子の月/侵入者など)に着陸できるのかと思って何度も試してしまいましたが、どちらも中のNomaiの記録を確認して終わりのようでしたね。特に燃え盛る双子星のほうのシャトルは、航行記録の「探索できる場所が残っています」の表示が消えず、何かやり残しがあるのかと結構時間をかけてしまいました。結局、重力砲でシャトルを回収せずに、元々あった侵入者のところでシャトルを確認すればよかったのですが……。シャトル内部の3択の操作パネルのうち、左(発射)と中央(重力砲へ戻る)は分かるものの、右の効果は最後まで分からず。私の調査不足?

 あとは、死亡した際の、仮面から記憶が流れ込んでいく演出。あれは何度も見ることになるし、毎回特に変わり映えはしないので、スキップ可能にしてもらえたら嬉しかったかな……。結構ながい……。

 

好きなエンディング

 Endings(公式wiki記事、英語)

 正しいエンディング以外にも終わり方があるのも好きな点の一つ。最初にクリアした時、先進的ワープコアを抜いてからは「これって失敗するともうループできないのでは!?」と焦りましたね~(もちろん後であらためて試した)。

 特に好きなのは「時空構造を破壊しました」と出るタイプのエンディング。まずはクリア後に実績の取り方を調べていて、高エネルギー研究所において偵察機を2つ同時に存在させる方法で到達しました。こういう終わらせ方ができるのもゲームならではって感じでいいですよね~。こんなに簡単に破壊できる時空構造だと、Nomaiの実験時に何度も破壊されてそうな気もしつつ。そしてその後、上記リンク先で自分を同時に二人存在させる方法を知り、これも確認(ここで何度も灰の双子星のコアにワープする必要があって、疲労した……)。ゲームクリアルートの外、航行記録外にもこういう面白いネタがあって、クリア後も数時間追加でプレイできてしまいましたね。

 通常のエンディングももちろん、かなり興味深いです。量子的な性質が強く、無数の可能性の中にある宇宙の眼に到達した主人公が、宇宙の眼の中からの観測者として、あらゆる可能性の中から一つを選んだ(現宇宙の崩壊を受け入れて、新しい宇宙を誕生させた)のかな?ちょっと解釈には自信がありませんが、太陽の超新星爆発を回避するといった突拍子もない解決策が提示されるわけではなく(太陽に限らず、宇宙全体が終わりかけていてもはや手遅れであることが分かっている)、散々ループの中で生死を繰り返しつつも、結局は宇宙の終わりを受け入れるという、なかなかヘビーなSF展開でよかったと思います。

 ちなみに、先進的ワープコアを抜いたうえで量子の月で超新星爆発を迎えるエンディングは、日本語だと表示がバグっていて何が起きたのかわかりませんでしたね。上記記事や英語版でのクリア動画を見るに、時間感覚を失って量子の月に永住することになる(そこにいるNomaiと同様の状態になる)ようで、エンディング内容としてはこれも好きです。日本語ローカライズもかなり品質が高いと感じていますが、稀に脱字がありますね……。

 

まとめ

 とにかく面白かったです!最序盤こそ戸惑いはあれど、ゲームの雰囲気を掴んでからは遊び終えるまで熱中してしまいました。それこそ紹介動画を作って感想ブログまで書くくらいには感銘を受けています。少なくとも2020年最高ゲーム体験だったのは間違いないし(2019年発売だったものを、2020年末に初めてプレイしたのはアンテナの低さを恥じるところではありますが……)、感覚としては過去にプレイした全てのゲームの中でも上位に来る体験だったように思います。クリア直後の今の熱量だけで「過去最高のゲーム!」とまで言ってしまうと、過去の自分やゲームの歴史に対して軽率な気もするので、さすがに最高かどうかまでは断言しきれないのですが、ほぼ間違いなく歴代トップ10には入ってくるような気がしています。

 クリアしてしまったことの喪失感もありますが、なんなら、別のデータでもう1周(航行記録を揃えるまで)遊んでもいいな~と思っていますね。ぜんぜん遊べそう。「プロフィールの切り替え」を使って、元のデータを残したままやり直せるのも親切ですね(PC版。XBOX One版、PS4版で同じ機能があるのかは未確認)。実績用のプレイや動画の収録でも使いました。

 これからしばらくは、Outer Wildsと比較してしまう恐怖と戦いながら、他のゲームと接していこうと思います……。そのくらい良質なゲーム体験でした!

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