映画感想 『インターステラー』(字幕版)

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インターステラー(字幕版)(Amazon Prime Video)

2021年1月10日現在、プライム会員は見放題。

 

インターステラー – Wikipedia(日本語版Wikipedia)

 

視聴した経緯

 「長いけど面白い」といったふうに勧める意見を以前から見かけており、気になっておりました、2014年公開の宇宙SF映画です!私は長い映画は苦手なので、そこが完全に障壁になっていましたね……。実際のところ、ほぼ2時間30分は、長い!

 しかしながら宇宙SFに対して機運が高まっていたのもあり、思い切って観てみました!(何によって機運が高まっていたか?それは数日前に感想記事も書いた、『Outer Wilds』というゲーム。インターステラーのような宇宙SFが好きな人には、ぜひプレイしてみて欲しいですね)

 

感想(ここからネタバレ)

家族のイザコザは要らな……いや要るかも……

 これはもう私のいつもの感想なんですけど、人間関係の描写要らね~!!ってなりましたね。私は完全にSF目当てで観ているので、人情ドラマが観たいわけじゃないというわけです。しかしながら、序盤から中盤までは完全にそれだったんですが、終盤では人間関係とSF要素の絡み合いがよく、ウ~~~ン……SFとしては人間関係をうまく内包できているのかも!と思うに至りました。

 相対性理論のアレコレで、遠くの宇宙に行った宇宙飛行士が、本人だけ若いまま、長い年月が過ぎた地球に帰ってくる……いわゆるウラシマ効果を扱ったSFでは、親子の年齢差が逆転したり、恋人が二度と会えなくなったりするのは定番ですね。定番ながら、父である主人公・クーパーと娘・マーフィーの描写にはかなり尺を割いていただけあり、再会シーンはかなり熱かったように思います。父と娘の双方にとって念願の再会でありつつも、娘にとっては既に他にも大切なものができているというのも、渋くてよかったです。

 マーフィーの部屋の「幽霊」は、この作品の中核をなす謎の一つだと思いますが、クーパーが四次元超立方体空間?に辿り着いてからの、「幽霊」の全貌が明らかになっていくシーンはやはり興奮しましたね。そしてこのシーンでの物語の展開には、親子の絆・執着といったものの必要性が否めないので、さすがに家族のイザコザを全て不必要と言い切ることはできないか~~~やるな~~~という感想に転じたわけなのでした。私はSF上の量子的な話が大好き!

 

そうは言っても2時間半は長いよ

 やはり2時間半は長い。2時間半の映画である以上、例えば他の1時間半の映画に対しては、1時間長いぶんだけの高い満足感が必要になるのではないでしょうか。私はそう思います。そうしてインターステラーは2時間半が最適だったのかと考えると、うーん、少しシーンを減らして2時間くらいにしてくれたら嬉しかったかも、と思いましたね。

 個人的に要らないと思う(カットして全体の尺を短くして欲しかったと思う)のはUAVを追いかける尺、学校での面談の尺、あとはマン博士の惑星の尺、そしてマーフィーが畑を焼く尺ですね。UAVと学校に限らず、クーパーがNASAに辿り着くまでの尺はもっと短くていいんじゃないかなと……地球の現状を説明するのはもっと簡潔でいい気がします。長くした分で説明が足りたかというと、それでもまだ足りてない気がするし。そしてマン博士の惑星ですが、元は優秀だった人物も宇宙の孤独の中では狂ってしまうかもしれないというだけの話で、さほどSF的な新鮮味もないので、全体の中では必要性が薄かったように思います。マーフィーが兄・トムの畑を焼く尺は、トムを一時的に出払うためかと思うのですが、そうしなくてもその前にマーフィーの部屋をあらためられるシーンがあったし、そのあと普通にトムの帰宅が間に合ってしまうので、畑が焼かれた分だけトムがかわいそうでは!?と思いました。どう考えてもマーフィーか、あるいはマーフィーの同伴者がトムに殴られる展開だと思ったのですが、マーフィーが大喜びでトムに抱きついてその場は解決。あの状況では、トムから見たら気が狂ったように見えるのでは……。

 

やはり人間は愚か!ロボットが最高!

 そんなわけでマン博士を始めとして、登場する人間はまぁ~選択を間違えてばっかり。人間は愚かだなぁと思うことです。そんな中にあって、燦然と輝く素晴らしいキャラクターが!ロボットのTARSとCASEですね。この2機は良かったです。燃えであり、萌え。

 ミラーの惑星(水しかないところ)で、鈍重な動きしかできないかと思われていたCASEが変形して高速移動するところは興奮しましたね。その後も2機のロボットは大活躍。2機の性格の差もよく描写されていてよいですね。2機が最後まで生存してよかった。TARSなんて四次元空間の目撃者ですよ!すごく大事なデータを保持してそうな気がしますが、博物館に置いといてよかったんでしょうか……さすがに吸い出し済み?

 

既婚男性と未婚女性の組み合わせはアメリカ映画のノルマか何かなの??

 これは本当に遭遇するたびに思うんですが、妻を失った子持ちの既婚男性が主人公で、未婚の若い(美人な)女性とチームになる話がアメリカ映画には多過ぎませんか?インターステラーで言うと、クーパーとブランド博士。そうは言ってもインターステラーは2人が恋仲になるわけではないからいっか……と思っていたら、最後の最後で、惑星に孤立したブランド博士にところにクーパーが一人赴く展開。恋仲どころかアダムとイブになるしかないやつ。この展開にすると映画が売れるのかな……。ブランド博士が惑星でプランBを進めてることが分かってるなら、クーパーが隠密でこっそり行かんでも、もっと大勢のちゃんとしたチームを送り届けたらいいのでは?

 

SF部分はさすがにハード。特に映像に価値あり。

 大作SF映画であり、しかものちにノーベル賞を受賞することになるようなガチの物理学者さん(キップ・ソーンさん)も参加しているだけあり、SF部分はさすがに見所が多いですね。「幽霊」の信号を読み取ってNASAに辿り着くあたりから一気に面白くなり始めます。

 先に打ち上げていた宇宙船とのドッキング、冷凍睡眠、土星付近のワームホール、全く知らない銀河系、水だけの惑星と大津波、氷に覆われた惑星と宇宙服での取っ組み合い、数秒を争う中での針を通すような再ドッキング、ブラックホール付近でのギリギリの航行、そして事象の地平線を越えた世界、四次元空間、人類が重力を理解して建設に至ったという宇宙コロニー。このあたりのSFの話の展開、そして何より映画としての高水準の映像は何にも代えがたいですね。先述の通り物理学者の方が監修しているとのことで、娯楽映画ながらも、おそらくはいくらか学術的な水準の映像を観られるというのがすごいですね。特にワームホール付近とその通過シーン、ブラックホール付近とその突入シーンは、想像の産物であってあくまでフィクションであろうとはいえ、特に好奇心をかき立てられる部分だと思います。宇宙ヤバイ。

 五次元に到達した未来の人類が作ったという四次元空間に入り込み、三次元の過去に干渉するというシーンは、さすがにハードなSFの範疇を超えていくらかファンタジーめいて来ます。しかしながら展開や映像はやはり最高品質。物語のすべてが精算されるがごときこのシーンの魅力のおかげで、長い長い前半の前振りを受け入れることができたような気がしますね。

 

SF部分にも気になるところが無いでもない

 お堅いハードSF……とはいえ個人的には気になる点もあります。作品のSF部分の根底を任せられてしまっている謎存在……五次元に到達した未来の人間!何それ!?いわく、時間なんかは超越しちゃってるらしいですが、だったらなぜわざわざ過去の人類に干渉しているのか(五次元に到達した事実があるなら、過去の人類を救う必要もないのでは?)、干渉するならするで、もっとハデに一発解決できるような干渉をすればいいのでは?といったところ。物語の前半では「彼ら」と呼ばれて、人間ではない何かとして描写されていたところ、終盤になってクーパーによって「これは未来の人間だ」という話になるわけなのですが、個人的には「謎の存在が助けてくれた」のままのほうが説得力があったような気もします。そもそも過去に干渉するというのが怪しい!そこはまあ、過去へのタイムトラベルや時間ループはSFでは日常茶飯事であり、かつ多くの感動的な名作を生み出している舞台設定なのですが……。私にもそういう系統で好きな作品はいくつもありますが……。

 他に不自然さを感じたのは、ミラーの惑星から宇宙船に帰還した際、宇宙船で待っていたロミリー博士が正気であったところ。20年以上宇宙船に単独で待機し、しかも冷凍睡眠をしなかったとか。それって何ならマン博士よりも過酷な状況だと思うし、食料とか酸素とかは宇宙船でそんなに生成できたのでしょうか?通信も娯楽もない中、20年も耐えられるものなのかな……。ここでロミリー博士がケロッとしているせいで、マン博士が狂気に陥ったインパクトが薄れてしまっている気もします。あと、これは本当に重要なシーンに対するツッコミなのですが、TARSが事象の地平線を超えて観測した重力についてのデータ、それって本当に1文字ずつモールス信号で伝えきれるものなのでしょうか?モールス信号ってアルファベット1文字ずつですよね。宇宙の最新データってそんな悠長な通信方法で伝えられるのかな……。それも人力のモールス信号で、過不足なく。案外、シンプルな数式とかなのかな?いやでも定数とか……。

 設定が気になるのは、しれっと土星付近まで打ち上がって運営に成功しているらしい宇宙コロニーですね。地球上の人口は60億から減っているというような口ぶりもありましたが、果たして地球上が住めなくなる前にコロニー内に全て内包できたのでしょうか?作中で描写されたクーパー・ステーションは、病院の庭で打った野球の球がコロニーの逆側から建っている家にぶつかる程度の広さで、あまり多くの人が住んでそうにも見えませんでした。たくさん打ち上げられたのでしょうか。そんなに作って打ち上げる余力は地球に残っていたのでしょうか?そのへんは、そもそもアメリカのごく一部しか描写されていないので、空想の余地かもしれませんね。他のSF作品(ガ○ダム)のことを考えてしまうと、果たしてコロニーで地球を離れたとして、本当にそんなに楽園のような生活ができるのかな?コロニー同士で戦争になったりとか?などと、余計な想像もしてしまいますね!

 

まとめ

 二時間半は長い!けどハードで見応えのあるSFが、納得感のある美麗CGで観られるだけでも価値が高い!家族ドラマも案外なかなか、SF基調のストーリーに溶け込んでいる!という感じで、評判の高い作品である理由が(そして「でも長いんだよね……」と言われる理由も)分かった気がします。内容のハードさと映像の品質、そして上映時間の長さが相まって、「映画を1本観たぞ~!」という達成感がかなり大きいですね。作中に出てくる宇宙用語・物理用語なんかも気になって少し調べてしまいましたし(当然、理解はできない)、知的に刺激される部分も大きい作品だったなと思います。

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