ゲーム感想 『メイドインアビス 闇を目指した連星』

概要等

メイドインアビス 闇を目指した連星
プラットフォーム:PS4、PC(Steam)、Nintendo Switch
2022年9月1日発売

Switch版をプレイ。

※以下、原作漫画を読んでる人向け。原作のネタバレがあると思いますので、まだお読みでないみなさんは早急に原作漫画を最新刊まで読んでください。ゲームオリジナルのストーリーについて細部には言及しませんが、ネタバレにあたる内容もあります。また、ゲーム内容についてのネタバレはおおいにあります。ご注意ください。※

 

評価・感想

総合評価:★★★
面白さ :☆☆☆
すごみ :☆☆☆☆
手軽さ :☆☆  (原作モード3時間、オリジナルモード37時間であわせて40時間くらい)
当ブログにおける作品の評価基準についてはこちら(別記事)

 

 相当、評価が難しいゲーム。決してクソゲーではない。ただ、理不尽でストレスの多い設計になっている箇所はあるし、明確に設計の悪さやバグを指摘できる箇所もある。原作モード(「HELLO ABYSS」モード、深界2層まで)とオリキャラモード(「DEEP IN ABYSS」モード、深界5層まで)のボリューム差がすさまじく、面食らうところもある。そういった点から人に勧めにくいので総合評価は★3としていますが、私自身の体験としては★4をつけてもいいレベルではあります。少なくともキャラゲーとしては相当よくできているし、原作における探窟家たちのアビス内外での生活を追体験できるコンテンツとしては良質で唯一無二だと思います。仮に私がメイドインアビスの世界に生きていて、オースの街に暮らしているとしたら、探窟家になるよりはオースの街で店でもやっていたいと思った。

 原作モードの名前は前述の通り「HELLO ABYSS」となっています。原作漫画においてリコさん隊がらみのエピソードの話数には「ハローアビス」という名称が付されていますが、つい最近どうやら「HALO ABYSS」でありそうなことが示されました。とはいえ両方を意味しているというか、HELLOと認識させていたものがHALOに変わるところに意味がある可能性もありますね。またオリキャラモード内で「本気のオーゼン」とやらと戦うことができますが、最近の原作漫画で「オーゼンがこの程度なワケねえだろ」「オーゼンのどこまで見たよ?いいとこ『千人楔』までだろ」といったセリフがあり、ゲーム内で戦えるオーゼンが本当に本気なわけない、といった補足が原作によってなされているような気もします。そういったこともあり、私は原作信者なので、ゲーム版のフレーバーについてはあんまり真に受けないつもりです。

 先に、このゲームの明確に分かる難点について述べます。まず原作モードをプレイしていてすぐに気付く点として、操作キャラクター以外におともキャラがいる時、同じセリフを短い間隔でひたすら喋っていてうるさい。「リコ、大丈夫か?」「うん!大丈夫!」みたいなやり取りを毎秒聞かされる。これはさすがに発生する秒数をいじるだけで済むことでは……と思う。続いておそらくSwitch版限定かと思いますが、なぜかスリープ中の時間がプレイ時間に含まれてしまい、プレイ時間の表示がすごいことになる。たとえば1時間プレイして、スリープして、24時間後にまた1時間プレイすると、それだけでセーブデータの表示は26時間になる。My Nintendoの表示によると私はオリキャラモードを40時間弱やりましたが、セーブデータの表示としてはおよそ250時間になっていますね。また、これもSwitchのスリープモード絡みかもしれませんが、しばらくプレイしていると、オースに戻って来た時に音声がバグって割れます。ホーム画面に戻る→ゲーム再開で直りますが……。ゲーム内のデータとして明らかにおかしいのは、オリキャラモードの中盤のクラフトで大量に要求される「しなやかなウロコ」。「ウロコがない」と図鑑に明記してある魚、あるいは終盤に出てくるクラゲからしか入手できません。ウロコとは。中盤に大量に要求されるくせに中盤にまとまった数を入手するまともな手段もない。開発の連携がうまくできていない印象を感じます。難易度について、特にオリキャラモードは割と難易度を感じますが、実は死因はそんなに多くありません。もっとも多い死因は落下死。それも、キャラクターを押し出す風を発生させる虫の原生生物が草むらの中など見にくい場所に配置されていて、気付かなかったプレイヤーを崖から落として即死させるようなパターンがすごく多いです。明らかにプレイヤーを不意打ちで死なすためだけの配置をしており、体感の難易度をむりやり上げるためにやってると思います。これは単純にストレスでしかないし、ゲームっぽすぎて没入感を損ねるので、悪手だったと思います。意地が悪い。

 このゲームのいい点は、原作で描かれているアビス内外の環境を追体験できること、これに尽きます。原作が面白すぎるため、ゲーム性としての多少の理不尽さや難易度を納得することができてしまう。初めて行くマップの通り道やギミックを見つけること、原生生物の対処法を発見すること(ダッシュで逃げるのか、食料としておいしく倒すのか)、HPと空腹ゲージを維持すること、何よりも大変な帰り道を生きて帰ること、そして何を持って帰るのか重量制限と睨み合うこと。言ってしまえばだいたいは不愉快さでもありますが、いかんせん原作が偉大すぎる。これが探窟家なんだ、これがアビスの大穴なんだと受け入れられてしまう。そう感じられるくらいにはグラフィックやマップで雰囲気は作り込まれていると思います。特にマップのボリュームと作り込みは相当のレベルなのではないかと思う。5層まで実装されてるのは本当にすごい。戦闘や装備などにはさほど選択肢がありませんが、必要十分。難易度があるし、際立っておいしい稼ぎ方とかもおそらく特にはないので、常に最適解を選び続けないとそこそこしんどい気がします。武器種とか防具とかまで縛りプレイしてロールプレイを味わうのは難しいかと思う。私は途中からそこそこ攻略サイトを見てました。攻略サイトを見なければナナチのアジトの行き方が分からなかったと思うし、ナナチのクエストをやらなければクリアまでもっと時間がかかった気がする。

 原作モードについて。2層までしかなく、だいぶ短いです。オリキャラモードを遊ぶと(驚くことに)マップはしっかり5層まで実装されていることが分かるので、それこそ開発期間やゲーム容量の都合、ゲーム性の担保、もしくはオリキャラモードを本体と考えて2層までと割り切ったのかもしれない。あまりボリュームが多くても大変なので、これはこれで悪くない判断ではあるかも。オリキャラモードのためのチュートリアルになっているとはあまり感じなかった。レグと一緒にひたすら下に行くリコと、単身でオースとアビスを行き来するオリキャラでは、色々とだいぶ違う。2層までとはいえ、再現度はかなりあると思った(おそらく原作漫画版よりはアニメ版寄りだと思う)。

 オリキャラモードについて。こっちがこのゲームの本体と思う。ボリュームの大きさに驚いた。正直言えば、ちょっとボリュームが大きすぎる。特に赤笛として1層にひたすらアタックする序盤が長すぎて、面白くなってくるまでに心が折れそうだった。赤笛パートはもっと短くてよかった。青笛以降はゲームが分かってきて面白みが見えてくるし、攻略済みの層をファストトラベルで飛ばせるようになるのでゲーム的にも遊びやすくなる(ただファストトラベルについては、もっとゲーム内で説明が欲しかった。いつになったら利用可能になるのかわからず、攻略を調べた)。仕方ないとは思いつつ残念なところとしては、「遺物」の面白さについてはゲーム内に再現できていないところ。不思議な効果を持つ遺物を手に入れて探窟に役立てる、というようなことはできない。手に入る遺物はすべて売却用かクラフト素材。唯一、原作でもオーゼンが使っている「千人楔」は戦闘用の遺物として入手することができ、実際に利用価値が高いので、これはかなり楽しかった。こういったものを増やすとゲームバランスの調整が難しくなるとは思うので、やむなしとも思うが、やはり不思議な遺物を楽しむようなゲームも別でやってみたい。

 オリキャラモードのストーリーについては、どちらかといえば微妙。主人公がベルチェロ孤児院の新入りという設定のため、先に潜ったリコすら追い抜いて5層到達、ゲームクリア時には白笛すら取得して6層へ……というのは不自然さが大きかった。作中で時間経過があって主人公が大人になっていたら、そこそこ自然だったかと思う。その場合アビスの中で出会えるアニメキャラが減らざるを得ないし、キャラゲーとしての判断は分かる。主人公はそれはまあアニメキャラにおだてられまくる。そういうのが好きな人には嬉しいかもしれないが、私としてはポッと出のオリキャラがアニメキャラにチヤホヤされるのはいささか寒くてどうかと思うのだった。先述の通り「本気のオーゼン」が出てきてあまつさえ勝ててしまうというのもあり。孤児院の同期として3人の子供が登場し、1層の序盤で1人が滑落するのだが、まさか本当に死んでいてそのあと再登場しないとは思わなかった。アビスっぽいといえばそうだが、何をやりたいのかよくわからず。どうせ生きてるんでしょ?と思ってたし、実際残りの2人のうち1人はそういうシナリオだった。

 総じて、メイドインアビスのゲームとしてはかなりよくできていると思う。原作漫画もアニメ版も知らない人にはさすがに価値が乏しいか。完璧なゲームではない、惜しいところがある、というのも事実。難易度とプレイ時間があるのでいまいち勧めにくいが、楽しもうと思って楽しめないゲームでは決してない。HELLO ABYSSモードだけなら3時間で終わる。DEEP IN ABYSSモードは面白いけど難易度とプレイ時間がなかなかたいへん。

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