感想 『ハロウィン』(1978年の映画)

ハロウィン <4Kリマスター版>Blu-ray(Amazon通販)

 

■Blu-ray、DVDが再販されたとのこと

『ハロウィン』(Halloween)は、1978年のアメリカ映画。「ハロウィンシリーズ」の第1作目である。ジョン・カーペンター監督・作曲、ドナルド・プレザンスと本作が映画デビューのジェイミー・リー・カーティスが出演している。本作は30万ドルの製作費で製作され、アメリカ合衆国において4700万ドルを稼ぎ[1]、世界では7000万ドルの興行収入を記録した[2]。

Wikipedia記事「ハロウィン (1978年の映画)」より

 

 1978年のホラー映画『ハロウィン』は、上記のように高い興行収入を達成し、その後もシリーズ作品・リメイク作品が作られ続けるほどの人気を獲得した傑作だそうな。現に2018年にも、直接の続編として作られた同名の『ハロウィン』が公開され(紛らわしいため、こちらは以後「ハロウィン2018」と表記する)、更にその続編『ハロウィン・キルズ』も2021年公開予定となっています。

 ハロウィンシリーズに登場する殺人鬼「ブギーマン」が、ホラー対戦ゲーム『DEAD BY DAYLIGHT』の操作キャラクターとして、「シェイプ」の名前でDLC配信されていることでも有名なのではないでしょうか。私もシェイプで何度かプレイしたことがあります。

 40年の時を経て今でも支持されるホラーシリーズ「ハロウィン」ですが、その第1作の日本語版Bru-layおよびDVDが再販されて入手可能になりました。そんなわけで購入して視聴いたしました次第。これまではレンタルビデオ屋に置いてあるものを発見するなどしないと観る機会が得られず、大変だったそうな?

 

■動機、そして同時視聴動画のご案内

【 ハロウィン (1978年) 同時視聴 】オリジナル版円盤発売感謝の宴【 Vtuber / ミラナ・ラヴィーナ /でじちゃん】(YouTube)

 

 そんな名作の映像メディアが再販されたとはいえ、そもそも私は映画に疎く、ホラー映画ともなればからっきしです。そんな私がなぜ再販の情報に辿りつき、あまつさえ購入したのか?

 それは例のごとく映画好きVtuberミラナ・ラヴィーナさん(Twitter)に圧力をかけられたからに他なりません。彼女はハロウィンシリーズに登場する殺人鬼ブギーマン(マイケル・マイヤーズ)にくびったけであり、ハロウィンの布教に余念がありません。

これで買っちゃう私も大概チョロい

 

 あげく「他にも買ってくれた人が一緒に観られるように、同時視聴用の動画を作ろう」という流れに巻き込まれ、上記の動画がアップロードされました。Bru-lay・DVDを購入された方はぜひ、映画とあわせて動画を再生して、マイケル・マイヤーズオタクがわめくのを楽しんでね!ちなみに、英語音声+日本語字幕で観ました。

 

■素朴さに好感

 さて本作に対する私の感想に入りますが、まず「観やすかった」と思います。なんせ40年も前の映画ですし、映像も脚本もシンプルです。第1作ですから前提として知っていなければならない情報もなさそうですね。当時のアメリカの空気感はなんとなくで察するしかないくらいかな?

 はっきり言ってしまえば、大して怖くありません。元々私はさしてホラー映画の怖さに怯えるタイプではないと思いますが、それでも『ハロウィン』は今観ると地味に感じられると思います。

 そのことにかえって好感が持てました。ホラー映画の始祖に近い作品でしょうから、この程度の怖さこそが「初期値」だったのではないかと推測します。一方で、あとから出てくるホラー映画は、以前のホラー映画(例えばこの『ハロウィン』)を怖さの面で凌駕しなければいけないわけです。あの手この手で工夫を凝らすことになるのではないでしょうか。それゆえに、どんどん複雑に、どんどん奇怪に、どんどん不愉快になっていくのだと推察します。

 私はいかんせんホラー映画初心者ですから、要素全部盛りで濃い味の最新ホラーをいきなり観ても、それを楽しむ味覚ができあがっていないわけです。たぶん。薄味で十分なのです。ゆえに、40年以上前のシンプルなこの『ハロウィン』は、観やすく、「どこを楽しむ映画なのか」が掴みやすかった気がしますね。

 

■シンプルな話の構造

 『ハロウィン』の内容を単純化して、箇条書きしてみます。

 

 ・6歳のマイケル・マイヤーズ少年はハロウィンの日、実姉を殺害する。

 ・マイケルは精神病院へ贈られる。

 ・彼を担当するルーミス医師は、彼の得体の知れなさに恐怖を覚える。

 ・15年後のハロウィンの頃、マイケルは精神病院を脱走する。

 ・マイケルはハイスクール女生徒のローリーを狙う。

 ・ローリーの友人の女生徒2名と、そのボーイフレンド1名をマイケルが殺害。

 ・マイケルはローリーを襲い、ローリーはかろうじて抵抗し続ける。

 ・マイケルを警戒していたルーミス医師がマイケルに銃弾を浴びせ、撃退。

 ・しかし銃弾を受けたはずのマイケルは死亡せず、行方をくらませた……。

 

 映画の内容は、異常な体力と包丁を武器とする仮装した殺人鬼「ブギーマン」を説明すること、舞台となる町ハドンフィールドと主人公ローリーの生活の描写、そしてその平和を破壊するブギーマンの凶行を演出することに終始します。

 私が何を言いたいのか、それはつまり、ホラー映画にありがちな余計な人間関係が少ない!これです!人間と人間で必要以上にモメて悪手を打ち、その隙を突かれて人が死ぬ……みたいなくどい演出がありません(モメるシーン自体はありますが、過剰な演出とは感じられません)。話の本筋や殺人鬼そのものに集中できるのがいいですね。

 映画の最序盤で6歳のマイケルが姉を殺害したあとは、最終盤のマイケル襲撃シーンに至るまで死者が出ないのも地味な点の一つです。ほとんどの時間、マイケルは存在感を匂わせ続けるだけに留まります。でも、その不気味な静寂の雰囲気は良かったと思いますね。

 

■シリーズ作との違い

 私が観たことあるのは今回の『ハロウィン』と、あとは「ハロウィン2018」だけなのですが……。

 実は主人公ローリーはブギーマン(マイケル)の実妹にあたるという設定があるようで、そこから、マイケルは家族を殺して回っているらしい……という推察が成り立ちます。おそらくシリーズ作ではそこが強調されており、「ハロウィン2018」においては、40年後に再脱走を果たしたマイケルが、ローリーを、そしてその娘も、さらには孫をも狙っているという描写がされます。

 しかし第1作の『ハロウィン』においては、ローリーがマイケルの家族であるということは映像からは読み取れなかったような気がします。少なくとも私は読み取れませんでした(1回しか観ていませんが……)。その関係性が作中で強調されることも無かったように思います。

 15年前に殺人を起こした少年が、成長して人知れず町に戻って来る。誰もがマイケルのことを忘れた町で、噂としてだけ残る「ブギーマン」が、突如現実となって襲いかかってくる。この、時間経過による忘却と突然の復活による不気味さが、映画の狙いとして感じられました。以後のシリーズ作における「家族を狙った犯行」といったものとは、恐怖の路線が違うように思いましたね(繰り返しになりますが、私は2作しか観たことないのでニワカ意見なのですが……)。

 

■殺人鬼ブギーマン

 ホラー映画タイトルの人気には、殺人鬼側の魅力も重要かと思います。シリーズ第1作の『ハロウィン』から私が読み取ったブギーマンの特徴は以下のようなものです。

 

 ・人間である
  →幽霊や超常現象ではない。通常の人間として描写される。

 ・喋らない
  →うめき声を発する程度。

 ・知能は高い
  →見よう見まね?で車を運転するなど。

 ・動機が不明
  →一般的な人間とは全く行動理念が違うらしい。
   「何を考えているか分からない」という描写がされている。

 ・我慢強い?
  →15年間、脱走後の機会を伺っていた?

 ・ローリーが見ている限りは動作が緩慢
  →激しい動作は少ない。
   ただ、目を離した隙にいなくなったりするので、
   見られてない時はダッシュしてるかも……

 ・身体能力が高い
  →力が強く、片手で男子生徒を壁に押しつけて持ち上げられる。
   足音を立てずに忍び寄ることができる。

 ・耐久力が高い
  →確実に人間離れしている点。
   首を刺されても死なない、銃弾を受けても死なないなど。

 ・殺害対象に心理的負担を与えることがある
  →特にローリーに対して、わざわざ墓石を運び込み、
   友人らの死体との対面を劇的に演出して見せた。
   殺人方法や遺体の見せ方に関してこだわりがある?

 ・殺害方法は首絞めによる窒息と包丁
  →包丁はトドメに使うだけで、割と窒息を狙うことが多い?
   声を出させないためにまず首を絞めるのかも。
   ローリーに対しては包丁で切りつけて切り傷を負わせた。
   包丁にはこだわりがあるのか、わざわざ金物店で強盗している。

 ・殺害対象は無差別ではない?
  →最初からローリーを狙っており、恐怖させるために友人らを殺した?
   ハイスクール女生徒を狙って殺しているようにも見える。
   6歳の時に殺害した姉を含めて、1作目では合計4人しか殺していない。
   また、子供は被害に遭っていない。

 ・仮装にこだわりがある?
  →6歳の時から、殺人の前に仮装とマスクをしている。
   ただし15年後と同じ衣装ではない。衣装は任意?
   ハロウィンの日に殺人を行うあたり、何かしらのこだわりはありそう。

 

 一見ただの快楽殺人者のようにも見えて、得体の知れないところがあるのが魅力です。あくまで人間として登場させつつも、「精神が普通ではない」というのを精神科医師に証言させて、異常性を持たせています。

 ルーミス医師の銃弾によって倒れたかと思われたブギーマンが、死体とならず、どこかに消え去る。すなわち、町のどこかにまだ潜んでいるのかも……と感じさせることが、本作のホラー演出の最後の一つになっていると思います。ただの人間というには異常に耐久力が高いところにホラー性を感じますね。

 生い立ちや精神の不気味さに加えて、やはり無表情な白マスクにツナギ姿の大男という見た目がキャッチーだったのではないでしょうか。やたらと派手に装飾するのではなく、シンプルに不気味さを表現していると思います。

 

■イマイチだったところ

 ルーミス医師。映画の序盤からそれなりの頻度で登場する割に、活躍といえば最後の最後に突然出てきて銃でブギーマンを撃退するシーンだけ。重要キャラである割に、ローリーとルーミス医師のダブル主役と言うには出番がイマイチです。

 作中で唯一マイケル・マイヤーズの異常性に気付いている人物として、事前に町を警戒するのですが、保安官まで味方につけた割には張り込む場所が間違っており、無駄足になります。保安官に対して張り込みを訴える時のセリフがいまいち詩的であり、医者らしくないというか、感情的というか。どちらかといえば、あの言い草のルーミス医師を信じて張り込みに同行した保安官の人の良さのほうが際立ちます。

 そして何より、ローリーが身の危険を感じて叫んでいる時にまったく気付きません。車どころか人通りもないような夜中ですから、気付いてしかるべしと思います。張り込む場所を間違えていたとはいえ、現場からはそう離れていないわけだし……。ルーミス医師がどうこうというよりは、ここは純粋に話の造りが疑問でしたね。

 

■総括

 40年以上も前の映画ではありますが、さすが未だにシリーズ作が作られているだけあり、視聴に十分耐える作品でした!特に私のような、最近のホラー映画で名作と言われるような作品には演出過剰を感じてしまうホラー初心者の中には、このくらい素朴な作品のほうがかえって楽しめる人もいるのではないでしょうか。その後のシリーズ作を楽しむ場合でも、第1作を知っていて損はなさそうです。

 総じてやはり、過去の有名作は履修してみるに越したことはないわね!という思いを強めました。今後も、有名作の履修は進めていきたいですね~。

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