映画感想 劇場アニメ『映画大好きポンポさん』

目次

概要

劇場アニメ『映画大好きポンポさん』公式サイト

 

2021年6月4日公開の映画『映画大好きポンポさん』を劇場で観てきました!

漫画が原作の映画です。
映画公開にあわせて1巻と2巻、スピンオフの「フランちゃん」と「カーナちゃん」がセールになっていたので読み、面白かったのでオムニバスと3巻も読みました!
それで、ここまで来たら劇場版も観よう!と思ったのでした。

漫画については以下の順番で読むのがいいそうです(作者さんのツイートを引用)。
劇場版は第1巻の内容ですね。

 

 

 

感想

 

総合評価:★★★★
面白さ :☆☆☆☆
すごみ :☆☆☆☆
手軽さ :☆☆☆☆
当ブログにおける作品の評価基準についてはこちら(別記事)

 

○原作の良さがある

 原作漫画が面白いんだから映画も面白い!原作のいいところを映画にも出せていると思いました。原作のいいところというのは、私が感じているのは2点あります。まず映画作りに関わる様々な立場の人達の熱さが伝わってくるところ。なんだか自分も頑張りたい気持ちになってきます。もう一つはあまり綺麗事を言わず、映画を作るにあたって必要な覚悟みたいなものとして、冷徹さや不健康さみたいなものを肯定しているところ。それでもあくまでデフォルメされた表現なんだとは思いますが、リアルさやシビアさみたいなものが伝わってくるように感じられるところが好きです。

 まずもって「映画作りに必要な全ての能力とコネを最高水準で備えた美少女社長ポンポさん」という存在からして非リアルの極みなのですが、余計なリアルさを切り捨てることで描けるリアルさというか……。ジーンくん(ジーン監督)もまたかなりデフォルメされた極端な人物像になっていますが、「このくらいの執念、狂気こそが歓迎される役職もある」みたいな描かれ方にかなり好感があります。ジーンくんが好きなのでこの作品も好きという感じがありますね。

 

△原作が良い

 原作漫画が面白いんだったら原作漫画を読めばいいんじゃないか?とは思います。90分の映画なのでかなり気軽なほうですが、それでも漫画を1冊読むほうが更に気楽だし安価です。この劇場版も斬新な演出やすばらしい映像、原作にない物語などを追加しており差別化は図れていると思いますが、突き詰めた時に「原作読めばいいじゃん」が一つの答えとして残るとは思います。

 

○原作にない良さがある

 まずは当然「漫画ではなくアニメになった」ということが大きく、それだけでも十分な魅力があるかと思います。特に、もともとが映画を題材にした作品なので、劇場アニメ化するというのは大きな意味があるのではないでしょうか。それに素人目に見てもわかるくらい演出が凝っており、漫画以上の表現に挑戦・到達していると言えそうです。原作第1巻にせよ劇場版にせよ、正直なところ序盤の物語はさほど面白くないと思っているのですが、その点では劇場版は、物語ではなく派手に演出される映像のほうを楽しむことができるようになっている気がしました。また、原作では(第1巻に限らず)ポンポさんやジーンくんが作り出す映画作品(いわば作中劇)も魅力の一つですが、劇場アニメ化されるにあたってそれらの解像度がだいぶ上がっており、ここは原作ファンにも嬉しい要素だと思いました(私はつい最近になって原作漫画を読んだニワカなので、原作ファンを自称するのは怪しいですが……)。

 物語としては、劇場版は漫画第1巻の内容がベースになっていますが、それなりにシナリオが変更・追加されていますね。特に私が良かったと感じるのは、72時間にもわたった撮影映像を2時間以下の映画に編集しなければいけないという葛藤の描写が大きく追加されたところ。どうにも物語ものでは「全部救う!」みたいな理想主義が善とされがちな風潮に私はだいぶ辟易しておりまして、ここでは人命とかではないにせよ、「目的のためには思いきって切り捨てていくことが必要」というのが描かれていて嬉しかったです。取捨選択することでこそ得られるものがあるというか。その取捨選択の葛藤が生み出される背景となる、1シーンごとの重みや監督にのしかかる責任感なども十分に描かれていたと思います。

 

△原作を損ねていると感じた追加要素もある

 これはあくまで「私はそう感じた」という程度の話で、単に私の好みの問題なんですが(なんなら私の感受性や読解力の不足の問題かもしれません)、劇場版で追加・変更された物語や演出が必ずしもすべて原作の良さを保っているとは思いませんでした。具体的にいくつか挙げると、まずナタリーがジーンに近すぎるところとか。これは原作でもある程度そうですが、それにしてもやや大衆迎合的な恋愛描写のようなものに近づいてしまった印象があります。ある種のミスリードと言えるのかもしれませんが、個人的にそこは別にミスリードされたいわけでもないので……。それと演出の派手さが魅力的な一方で、演出過剰みたいなものも感じました。例えば「いい映像が撮れたことを感じ取る演出」なんかは、そもそも原作の時点でやや過剰に感じられたところで、それを映像化するにあたって更に強調していたのでやり過ぎを感じましたね。作品の切れ味的なところでは、編集に行き詰まったジーンくんがペーターゼンさんからアドバイスを得るシーンでは、なんかちょっと「ポンポさん」らしからぬ一般ウケ的な理論が飛び出してきたなーと感じました。繰り返すようにこのあたりは単に私の好みの問題なんですが、こういうフワッと前向きで抽象的な考え方ではなく、現実的・実利的なものの捉え方で作品作りを進めるカッコよさみたいなものを求めていました。

 映画の終盤はかなり「必要な映像を取捨選択する」という内容にフォーカスしていたと思いますが、この映画自体は必ずしも無駄なシーンがないとも思いませんでした。原作第1巻を映画化するにあたって、尺を削るのではなく、足す必要があったという印象です。ジーンくんが映像編集する際の心象風景としてある種バトルシーンのような映像が流れますが、2回もあるし、やや長かったと思います。特に「それはどうかなー」と思ったのは、ミスティアさんが作中劇「MEISTER」に出演することになるシーンです。原作では出演しないわけですし、ミスティアさんの出番を作りたかっただけでは?という印象がありました。加えて、ジーンくんが編集中に一度入院して抜け出すくだりは、単純に余計な回り道だなと思いました。そもそもジーンくんの編集作業中にナタリーさんが何度も登場するのはちょっと微妙でしたね……観ていて「監督を邪魔しないで!」と感じました。正直に言って、ナタリーさんはあまり魅力的に感じなかったな……。

 劇場版の特に大きな追加要素となる、新キャラクターのアランくんについては良し悪しでした。トータルでは良かったと感じていて、映画作りにおける資金繰りの問題が新たに描かれたのは新鮮かつ刺激的で面白かったです。それに乗じて若いイケメンキャラを登場させる手腕もすばらしい。ただアランくんの最後のプレゼンについては演出過剰や、手癖のようなありがちな成功ストーリーを感じてしまうところがあり、「ポンポさん」ではもっと残酷で能力主義的な世界観を味わいたかった気がします。物語全体を通してのアランくんの浮き沈みはかなり魅力的で、熱くなれるところもありましたので、単純に最後のプレゼンがいわばクサかったかなと思います。動画を使った広報だとかクラウドファンディングとかについては、まあ今風なのかも?というくらいの認識ですが、会議を生中継とか、会議では否定されるものの理解のある一番偉い人が出てきて……みたいな展開はクサかったです。

 

・まとめ

 不満点(というか違和感?)について結構長々と書いてしまいましたが、それは私の悪癖ですね。総合では不満よりも満足のほうが大きいので、評価は星4つとしています!原作が良くて、それをうまく映像化できているんだから悪いわけがない。アニメ的な演出も派手で楽しい。

 なんせ「私も何か創作を頑張りたいな!」みたいな前向きな気持ちにさせてくれるところが強力な作品だと思っています!作ることの大変さを伝えてくると同時に、それに立ち向かう意志のあり方も示してくれるというか。感動するし、登場人物の熱さだけでウルッとくるところもありました。良かったです!

 あとこれはめちゃめちゃ浅い感想なんですが、ペーターゼンフィルムの受付?の眼鏡のお姉さん(ポンポさんのモノマネでジーンくんに伝言を伝える人)がかわいかったです。たぶん何の脈絡もない新キャラだったんじゃないかと思うし、どちらかというと原作崩壊のただの萌えキャラだと思うんですけど、私は……まあ好みなので……はい。エンディングの画像を見るに、しかも双子キャラなのかな?萌えておいてなんですけど、なんでそんな単に趣味で作ったみたいな設定過剰の萌えキャラを投入したんでしょうね……。

 思い出したので最後に書きますが、ポンポさんの足音が思ったよりポッキュポッキュしてなかったのは残念です!!

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