映画感想 『ミラベルと魔法だらけの家』(原題:Encanto)

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ミラベルと魔法だらけの家(Disney+)

上映時間109分。2021年の映画。

 

あらすじ・概要

 祖母から続くミラベルの大家族は、魔法の家「カシータ」に住んでおり、直系の子供達がそれぞれ持つ魔法の力もあって、町の中心的な存在となっている。しかし直系であるにも関わらず、ミラベルは魔法の力を得られず、そのことは彼女のコンプレックスとなっている。

 

評価

総合評価:★★
面白さ :☆☆
すごみ :☆☆☆☆
手軽さ :☆☆☆
当ブログにおける作品の評価基準についてはこちら(別記事)

スタッフをある程度引き継いでいるところからも前作と呼べそうな「モアナ」に比べると、だいぶ面白さに欠ける、個人的には残念な作品。映像はすごかったです。

 

感想

 何しろ「卑屈すぎる」と感じました。ひたすら主人公ミラベルが無能力者であることのコンプレックスや負い目の話をしている。5歳の時に魔法の力を手に入れる儀式に失敗し(ミラベル本人や儀式の手順などに問題があったわけではない)、それ以来10年間コンプレックスを抱えて生きてきたという序盤の描写だけで物語の準備は十分だと思いました。しかしながら、その後もミラベルが負い目を延々と増やしていくという驚きの展開。私の想像では、たとえば最初の15分でミラベルのコンプレックスを説明したら、それを原因にしてミラベルが冒険に出かけたりするものと思ったのですが、そうではなく、長いスタッフロールを除けば実質90分程度の映像の中で、たっぷり1時間くらいはひたすらミラベルが立場的に追い込まれる話をしていました。「楽しい話かどうか」という観点で言えば、間違いなく楽しくないです。

 テーマから物語をうまく膨らませられなかったのかなという感じがします。「無能力者の活躍」みたいなものを描きたかったんだろうと思うんですけど、その前段としてあまりにも執拗にミラベルの失敗と屈折を描くものですから、どちらかといえば、無能力者であってもこうは見苦しくなりたくないなあ……みたいな気持ちになりました。話に内容が乏しいのかもしれません。ミラ虐に時間を割きすぎ。しかも、結局ミラベルが能力を得られなかった理由は語られないし、最後にミラベルが能力を得たりもしないんですよね。物語の設計として無能力である必要があるので、その都合で無能力にされただけの主人公という感じ……。

 あるいはテーマが多すぎたのかもしれません。ミラベルが無能力者としての葛藤を持っていることに加え、他の家族も何かしら問題を抱えていますね。その問題をまず描写し、そのあと主人公ミラベルとの関わり合いの中で解消させなければいけないわけですが、よりによって家族が大量にいるわけなので、思えばそれだけで尺が全部終わっていたような気もします。テーマが多すぎて、作業的に問題提起と問題解決を繰り返すだけの物語になってたかも。

 ディズニー作品のヒロインが眼鏡をかけているということでも話題になった作品ですが、私はその眼鏡ヒロインのミラベルを美少女として設定しなかったことを恨みますね。なぜ世の中のクリエイターは眼鏡っ娘を普通の美少女キャラクターにできないのか。なぜ属性をひたすら盛ったりして微妙なキャラクターにしてしまうのか。それでは眼鏡に対するイメージは払拭されないんですよねえ……。ミラベルが美少女キャラクターとして設計されていないことは、比較対象としてミラベルの姉イサベラが物語上で完璧な美人として言及されていることから明らかです。実際に見た目としてもイサベラのほうがかわいい。こう考えると、イサベラの持ってる属性は美しく、ミラベルの持ってる属性はそうではない、といういささか時代逆行的なメッセージを持ってしまっている気も。

 一方で、ミュージカルシーンの映像や楽曲の品質は、最新のディズニー作品だけあって素晴らしいものでした。サルサ調?の音楽が良かったです。それらミュージカルシーンの主役はだいたい魔法の力を持ったミラベルの家族なので、やっぱり有能力者が最高~ということになってしまいますが……。

 魔法の家と魔法の力を持った家族という設定は面白かったのですが、無能力者の葛藤のようなものを描きたいばかりに物語が卑屈に歪み、そして延々とそんなシーンが続くためいまいち楽しくないという感じの映画でした。ミュージカルシーンの品質はすごかったと思います。これでもう二度とディズニーに眼鏡ヒロインは出てこないだろうなあと思うと悲しいですね……。

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